黒潮丸のガーデン読書録

 

書名:大名庭園 著者:白幡洋三郎 出版社:
講談社選書メチエ
発行年月:1997・4 価格:1553 頁数:264
読んだ理由: 江戸時代の園芸ブームについては知っていたが、後楽園や六義園などの大名庭園を誰が見ていたのか不思議に思っていたから。
 
読んだ日:02年4月  
内容:
大名庭園は大変な社交の場所なのであった。例えば将軍のお成りの時など、数百人がお供をする。そのすべてを接待する場所であった。宴席あり、茶席あり、飲食あり、余興あり、模擬店ありの大賑わいなのである。いうなれば帝国ホテルやオークラを借り切っての大パーテイを、自分の庭で行っていたのである。けっして鑑賞するための庭ではなく、利用するための庭であった。

しかし近代の日本庭園史では、<江戸の庭は芸術性が失われ遊戯的趣味に堕した>として京都中心の庭園の下にみたのである。王朝風みやびの回遊式庭園、禅宗的抽象の枯山水庭園を理想として、江戸の実用を否定的に評価したのである。
著者白幡氏はこの評価基準に再考を促す。意匠と様式は必要と密着するほど洗練の度を増す。たんなる鑑賞や非日常的造形は意匠本来の意義から遠ざかるのではないか。

著者によれば江戸市内に立派な庭園が数千はあっただろうという。

「潮入りの庭」についても詳述されているが、「潮入りの庭」は世界に誇れる庭園様式であろう。だいみょう
 

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