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原理と要素
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反復 | 「反復」とは周辺がいろいろ変化する中で、ある1つのデザインを保持し続けることです。 「反復」は庭の中で同じ模様で繰り返し紡がれる糸です。どんなデザイン要素も繰り返されることで人の心によく理解され、秩序感覚を醸し出してくれます。 繰り返される線、形、質感、香り、色は、そのものの性格を形作ります。 庭にある美しい質感の植物を揃えることは、デザインに統一性と、強い簡素な感覚を与えます。 注意すべきは、「反復」があまり極端に過ぎると庭は単調になるか、かえって無秩序の感じを与えるようになります。
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変化 | 「変化」は庭の生命です。
線、形、質感、香り、色の「変化」は多様性を作り出します。他との同似性を避けるために違いを持たせることが必要です。 「変化」は「反復」の反対概念です。あまりに多くの要素を入れて変化させすぎると、カオス・無秩序を招きます。だから景色に統一感を与えるためには、「反復」と「変化」の調和が 重要です。
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バランス・調和 | 「バランス」は庭が人の心に安定感を与えたり、休息・平穏の感覚を与えることに関係します。 線、形、質感、香り、色ははすべて我々の関心を惹き付けるので、これらの持つエネルギーは慎重に測られ、「バランス」を図られなければなりません。
バランスはあらかじめ想定した中心の軸に関連付けられます。これは整形式庭園においても非整形式庭園においても同様です。 最近人気のある自然風な非整形式庭園は、水平や垂直の要素、小さな濃い塊りと大きな拡散する眺めとのバランスをとることで成り立たせます。
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強調 | 「強調」は庭のデザイン要素の中で最初に注意を惹き付けるもの、常に視線がそこに戻るものを創り出します。 「強調」は庭のデザイン要素を重要なものと、あまり重要でないものに振り分けることでもあります。庭の構成要素はすべてが同じ立場ではありません。 一方あまりに多くの要素があると、効果が減殺されます。 |
連続 | 「連続」は庭の動きです。 線、形、質感、色がはっきりとした意図をもってある方向とか、焦点に向かって変化させられる時、それは発展するリズムになります。 「連続」はいろいろなデザイン要素を結びつける役目を果たします。それは注意深く単調な繰り返しを避け、きめ細かいものから粗い質感のものを並べたり、非常に目立つ2つか3つの要素を交互に使用したりすることで達成されます。
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釣合い |
庭の中で大きさの「釣合い」は庭の調和と関係します。 すべての庭の中のデザイン要素は、庭全体の大きさを前提として考えられるべきです。 ある物の実際のサイズは、隣にあるものとの相対的な関係における釣合いとは異なります。ですから「「釣合い」は同じ要素を構成する対象物の関係で決まります。 小さな山野草と樹木とを比べるのは、大きなビルデイングと樹木を比べるのと同じように不釣合いです。 |
デザインの要素
庭を、環境と調和し人間の五感を満足させるように作るためには、ガーデナーはデザインの6つの要素を忘れてはなりません。
Line:線 線といきなり言われても困りますが、輪郭線のことをいっています。日本庭園でいえば、借景の山並みの線、歩道のカーブ、大刈込みの背中の線、池の汀の線などでしょうか。
ガーデンデザインでは線が方向の感覚と動きの感覚を作り出します。視線はおのずと庭のラインを辿ります。これは歩道の端なのか、花壇のカーブなのか、植物の外縁なのかと。
ラインの性格がそれぞれに応じた反応を引き出します。穏やかな、ゆっくりとした水平なカーブのラインは安らぎを与えるし、ギザギザの斜線や縦に上下するラインは興奮と緊張を作り出します。
Form:形 植物にはそれぞれ形があります。円柱型、匍匐型、叢型、丸型・・・
樹木、潅木、草本類、それぞれに形があります。建物、構築物、添景物、コンテナ類、それぞれ形があります。その形の要素を組み合わせてデザイン上の効果を演出します。
形は多分ガーデンデザインの中で最も力強い要素でしょう。形は庭を遠くから最初に一瞥した時にまず認識されます。 ある形はよりドラマチックに注意を惹き付けるでしょう。
すべての植物は成長につれて変化し進化する固有の形や大きさを持っていています。山型であれ、しだれ型であれ、円柱状であれ、広がり型であれ、丸型であれ、これらの形が庭のスペースを分かち、性格付けをします。
引き締まったり、葉が生い茂ったり、常緑だったり落葉だったり、植物の形の特性は季節や庭のラインの変更によって変化します。
植物を配置する場所によって眺めが遮られたり、視界が開けたり、あるいは植物の成長過程によって眺望が変化したりします。
心地よい空間を作り出すために植物の形と配置が極めて重要です。
Texture:質感 植物の表面、葉や樹皮の表面の見掛けや肌触りをいいます。Coarse:粗い、Medium:普通、Fine:肌理細か、などと表現されます。日本の庭園文化では質感はあまり取り上げられませんでした。
奥峰子さんの「フォーリッジ・プランツ」という本で、Textureに関して英語でこんな表現があることを知りました。
shiny(陽光のような) glossy(光沢紙のような) lustrous(ぴかぴかの) nitid(明 るい) polite磨いたような) glaze(氷やガラスのような) satin(絹のような) pearlscent(真珠のような)
日本では植物の質感に関して<・・・のような>ではなく、1語で表すこれだけの熟語はまだありません。
絵画や織物の世界にはあるのかもしれませんが。庭の中の質感の変化は感覚的・視覚的な興奮を作り出します。質感は葉の茂みや隙間、樹皮や花々から読み取られ、毎日のまた季節による光の動きにより変化します。
ずっと近寄れば葉や小枝のサイズや形状が植物の質感の支配的要素となるし、遠くから見ると、質感は全体の光と影の模様から齎されます。
荒っぽく粗野な質感はよく目立ってくだけた気分を醸成します。きめ細かな、なめらかな質感は、整った優美な抑制された気分を作りますが、視覚的には受身です。
きめ細かな質感の植物は視覚的には遠くにあるように見えるので、小さな庭で遠景を見るような効果を与え、庭を広く見せます。一方粗い質感の植物が優勢だと、庭が小さく見えます。
質感の強い対比があると庭にドラマと関心を付け加えます。
Scent:芳香 植物の香りです。
庭での香りの要素は往々にして無視されますが、香りの導入は感覚的な注意を呼び覚まして庭に新しい魅力を与えます。
もし広く開けた庭なら、香りの植物は狭い囲われた場所に植える必要があります。
デリケートな香りは、入り口近くや園路のそばやパテイオの端でよりよく賞味されるでしょう。
よく選ばれた香りは、色彩のように一定の感情的な反応を引き出し、庭の中である気分や時間感覚を作りだすことができます。
Color:色彩 ウイリアム・ロビンソンは「庭のアレンジでもっとも重要な点は色の効果を考えて花を配置していくことだ。」と書いています。
ガートルード・ジーキルが<カラー・スキーム>の概念を打ち出して、色別の花壇を作ったことはあまりにも有名です。個々の色が一般的に醸成する情緒的反応が研究により判ってきています。
鮮やかな赤、黄、オレンジは気持ちを興奮させる傾向があ ります。
ソフトな青、緑、紫、ピンクは心を穏やかに静める効果があります。これが緑のモノトーンの日本庭園が尊敬される理由の1つです。「緑色の音楽」はブルーグリーンからイエローグリーンまで庭の無数のグリーンに関してよく言われる言葉です。
白は中立ですが、どこか気持ちを浮き立たせる効果を持ち、かつ全体をまとめる偉大な統一者で す。色彩は往々にして多くのガーデナーを悩ませ困惑させる要素です。
しかしあるガーデナーにとっては色彩は庭をデザインする唯一の要素でもあります。色彩はガーデンデザインのキーとなる要素ですが、多くの人があまりに大きな重要性を与えすぎているともいえます。
またデザイナー達が色に関して規定している複雑なルールに絶えず悩まされます。
Scale:大きさ 大きさには何メートルという絶対的なサイズと、隣り合うもの同士の相対的な大きさがあります。 大きさの連なりが人の気持ちに与える影響を考えながら植物を選びます。
ガーデナーは植物の成長に合わせたサイズを知っていて、5年後、10年後の姿をイメージしながら植物を選ばなければなりません。
レッスンの目次
花壇の種類
花壇のプラニング
ボーダーガーデン
レイズドベッド
アイランドベッド
ロックガーデン花の種類分け
花を植える方法
植物の生理
用土のことはじめに名前あり
(国際栽培植物命名規約)
デザインの原理と要素
ゾーニングと動線
フォーカルポイント
色彩使用の3つのポイント
寸法表
by PCC